こだま幼稚園は高崎にある認定こども園です。

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こだま幼稚園の施設設計について 

            建築家/早稲田大学名誉教授 入江正之

 

 こだま幼稚園は高崎市下豊岡町に1977年に創設されました。創設からすでに44年がたち、園児数250名以上を擁する歴史ある幼稚園です。そしてほぼ30年を経過した折、これまでの既存の園舎と屋内プール棟を取り壊し、新しい園舎がこれまでナトゥ—ラ棟、ティエラ棟、そしてルークス棟の3棟が順次建設されました。

ナトゥ—ラ棟はRC造(鉄筋コンクリート造)2階建の園舎と木造の屋内プール棟の構成、またティエラ棟は木造2階建の子育て支援センター、そしてルークス棟は鉄骨2階建の園舎です。各園舎内部は木をふんだんに使用したエコ空間になっています。以下に、それらの設計意図について述べます。

 

1,ナトゥ—ラ棟についてーNATURA

NATURA

 この地を訪ねるとき、浅間山が遠望され、また赤城や榛名の山々やそれに連なる妙義の連山が、ここに住まう人々の生活の背景を作っていることを実感します。それらの柔らかく、またある時は鋭く波打つ形態は、この地の人々の心と身体のなかに生きているフォルム(形態)と思います。印象に強く残りました。

 設計依頼を頂いた時に、理事長先生、園長先生から幼児教育についての考え方を縷々伺うことができました。器楽を伴う音楽による指導と共に、その成果の発表としての大きなホールを借り受けての演奏会、また屋内温水プールでの水泳やさまざまな運動や舞踏における律動、また声を上げての抑揚を通して百人一首などを諳んじることなどが教育の基本です。そこに通底する教育の理念は、音や抑揚やリズムとともにある生命感のようなものと感得しました。「音の波」という言葉が浮かび、同時にこの地に住まう人々の、また園児たちの視界に息衝くフォルムがこの言葉に重なりました。

NATURA波のフォルム


 この教育の理念に伴う「音の波」の連関から、またこの地に生活する場所の風景の連関から、この施設設計に自然の生命感のようなフォルムを表現することが必要だろう、と考えました。私が研究を行ってきたスペインの天才建築家アントニ・ガウディの自然のフォルムに発する建築の学びの一端を表現しています。学び舎のフォルムは園児たちの身体と心の中に記憶される空間の原体験としてのイメージと深く結びついています。これらのことを素因として、こだま幼稚園の建築空間と形態を生み出すことができました。

NATURA内部


ナトゥーラの眼について

ナトゥーラNaturaとは、自然という言葉のラテン語名です。自然とは生命であり、こだま幼稚園の音楽、運動、抑揚、リズムなどを通した園児たちの教育指導の底に流れる生命的なものに照応するものです。この生命感に基づく促しのようなものが、母なる自然ナトゥーラの眼差しに仮託され、園に行き来する園児たちの健やかな成長を見守っています。ナテゥーラの眼は玄関棟の屋根の上に配され、一方は大地を表す黄色の眼と天空宇宙を表す青色の眼をもっています。

 NATURAの目

 
2、ティエラ棟についてーTERRA/TIERRA

 ティエラ棟はこだま幼稚園子育て支援センターです。ティエラTerraは大地という言葉のラテン語名です。(ラテン語読みはテッラ。派生語スペイン語Tierraは同じ意味で、発音が日本語向きでこちらを名称にしています。)  ナトゥ—ラ自然と関連して、子供たちが豊かな大地で、元気に育まれていくイメージの命名です。1~3歳児の健全な発達と、子育て中のお母様方の育児をサポートするために構想されました。

TERRA外観

 児童福祉施設であること、構造方式を構想する中で規模的に木造2階建としました。1、2階に各々100㎡ほどの遊戯室の一室空間があります。「広い空間の中で、思いっきり、ハイハイしたり、高這いしたり、走ったりして、幼児期に必要な身体機能を高めて、豊かな成長を導いてほしい」という園の取り組みです。その周囲に西側から南側にかけて職員室や保健室、子育て相談室などの管理室関係諸室と、厨房や水回り関係諸室と階段室を箱状の在来工法的な間仕切り壁によるゾーンとしてまとめました。

 主敷地から少し隔たった北側の交通量の多いい国道406号に面しています。情報としての幼稚園の活動の一端を、往来する車乗する人々に伝える役割をこの施設に託しています。その視点から施設の建築デザインを導いています。


 耐候性のガリバリウム鋼板を小波板張りとハゼ張の二種類の工法の使い分けで、門から壁、そして屋根、さらに玄関庇と途切れることなく展開させて施設外観を形作っています。シンプルですが、アイデンティティを持つデザインになっており、改めてご覧になってください。内部は対比的に、大方〔おおかた〕県産材のスギ板縦本実張り〔たてほんざねばり〕であり、内包する空間を木の柔らかい質感がさらに内側からくるみこむような温かさの表現です。この空間を保持するために、1階は集成材大梁と柱組の組み合わせであり、構造を利用して色彩のある子供たちの隠れ家的アルコーブを作りました。また2階は木と鉄のスレンダーな張弦梁を、ピーンと張り詰めて架け渡すことで大きな一室空間を解決しています。

 
TERRA内部

3、ルークス棟についてーLUX

 ルークス棟はナトゥ—ラ棟の北側、草創期のこだま幼稚園の施設があった空地に新築として増築されました。ルークスLuxは光を表すラテン語で、文字通り園児たちが明るい光に包まれる園舎としています。ここでは3歳児以下の保育環境をさらに向上するため、また卒園生のための学童保育であるプレミアム・スクールなどの、様々な新しい取り組みの試みを行うための場所です。

LUX1

LUXとNATURA
 平面形状はナトゥ—ラ棟北側弧状壁面と東西方向からの動線を考慮して、用水路際の既存園庭の敷地境界ラインに則して決定しています。建物は地盤を配慮した鉄骨造2階建の建築です。敷地形状自身の不定形を利用する平面間取りは、全体を一室的空間として取り扱うことで、その中にブドウの房のような保育室、事務・医務室、学習室、配膳室などの単位空間が配されていきます。そうすることで、残余の空間がそれら諸室と一体的に使えるようになった遊戯室(ホール・プレイルーム)であり、2階では色彩を付した3つの木製ボックス(アルコーブ)をランダムに挿入し、園児たちの動きを促すと共に、その躍動感を体現しています。2階は放課後に学童をはじめ様々な試みに使うことも想定しています。細かいことですが、1階は木枠や道具棚などの収納の高さを床上+900としたのに対し、2階は床上+1100としました。そのため、幼稚園児や学童にとっては異なる空間体験ができるように工夫しています。

LUX 1F

LUX 2F

 外観は薄い皮膜のような、「ルークス」を体現するガラス、金属スクリーンが南面を、ポリフォニックな多様な色合いが飛び跳ねているような北、西面のALC壁体(軽量気泡コンクリートパネル)が形作り、空間を包みます。既存部ナトゥ—ラ棟と増築部ルークス棟は、円弧状のヴォイド空間(中庭空間)で柔らかく接続しています。前者のコンクリート打ち放しの重厚なホリゾント状壁体に、後者の多様に刳り抜かれたアルミパネルとその開口部を持つ軽快な白い壁体が相対し、張りのある空間が両者を?ぎます。

LUX and NATURA

 繋がりの仕方にもう一つの意味を持たせています。この幼稚園が既存の諸施設や園庭、用水路北側の新しい北側園庭を介しながら、最新のルークス棟を中心とする諸施設が融合する。その在り方が将来的に高崎郊外の住宅地に浸透して幼児教育の新しい展開へと繋がり、地域的スケールで世代交流が生まれる場であるとともに、まちづくりの拠点の形成になればと願っています。

 


 以上がこだま幼稚園施設の設計についての理念から、デザインや技術面にわたる概要です。お読みいただいた方は、ぜひ諸施設を具に見ていただければと思っております。


(最終更新日2021年04月07日)
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